NOVEL
「霧の惑星 第一章」
ー入国ー
2352年、地球上は霧に包まれていた。化石燃料がもともと少なかった日本はその形態を残していた。霧に包まれている事には変わりはなかったが、人間が生きていくための物は他の土地よりは恵まれていた。ここにはかすかだが電気もあった。 東京湾に入ってくる船の1艘に亜偉達は乗っていた。咲都の親戚が日本にいると聞いて、それをたよって東京湾にたどり着いたのだ。ここは現在もっとも入りにくい港の1つであり、ジャパンシティの人間とのDNAチェックの合格証がなければ決して入る事は出来ない。 桟橋に付いた船にはセキュリティチェックの一団が入ってくる。咲都は善火から受け取った親族証明カードを見せている。亜偉は呼ばれるまで何もすることがない。仕方がないので外を見ていると既に入国拒否された人々が隣の船に乗り込んでいた。 この国に入れるのはこの船の中でもひとにぎりの人間だけだ。亜偉達はここで入国できなかったらもう行くところはない。咲都の渡したカードをセキュリティチェックボックスに入れると、善火のメッセージが流れた。 そこには咲都と亜偉をジャパンシティに入国させ、品川に行かせるように指示されていた。 セキュリティチェックは住所の照合を行っているようだ。しばらく待っていると、
「スタンバイAに進みなさい、そこで呼ばれるまでしばらく待機しなさい」
咲都と亜偉は通路を進んでいった。周りの人たちはじろじろと二人をにらんでいた。なにしろ入国できるのは全体の3パーセント程度でしかない。その中の二人が先に進んでいくのだから。 「Stand by A」と書かれた扉の前に立つとイメージドアは10パーセントくらいまで透過した。中には二人の人がいた。その先が税関らしい。二人が入っていくと中にいた二人は次のゲートに進んでいった。咲都が亜偉に
「やっぱり、チェックがきびしいね。」
と言うと、亜偉は言った。
「君は大丈夫だよ。ぼくはどうだかわかんないけど。」
亜偉は善火とは血のつながりはない。善火が咲都と一緒に入国できるように指示を出しているだけなのだ。入国審査で引っ掛かる可能性は大きい。でも、あまり深刻には考えないようにしている。 亜偉にとってはこの国にどうしても入国したいわけではないのだから。どうせここも深刻なエネルギー問題を抱えて近い将来、崩壊してしまうに決まっている。みんな、少しでも長生きがしたいだけなのだ。
「ここは空気がきれいすぎる、あまりクリーンだと息苦しくなるな。」
「そうね、外の空気になれているからこれだと息苦しいね。」
この入国管理タワーは完全にエアーコントロールされていて50年前と同じ状態が保たれている。亜偉達は劣悪な外気に慣れているのでかえって息苦しく感じるのだ。さっき入ってきた扉から人が入ってきた。 すると、「Stand by B」と書かれた扉に「咲都・亜偉」の文字がディスプレイされ、10パーセントまで透過した。ドアを抜けると審査官の姿があった。
「咲都さんですね。入国審査はパスしました。Cルームで待っていて下さい。」
「亜偉は一緒に行ってもいいんですね。」
「亜偉さんは直接入国扱いではないのでこれから審査があります。」
「そうなんですか。」
「亜偉さん、こちらで審査を行います。」
「はい、わかりました。審査ですね。」
やはり簡単には審査を通してくれそうもない。審査室に入るとそこに一人の老人が座っていた。その老人はゆっくりと立ち上がって、
「私が善火じゃ、よく来てくれたな。」
と言った。
「あなたが善火さんですか。ぼくは入国できるんですか?」
「もちろんじゃ、入国してからやることは決めてるのか?」
「いや、それは、ここで何が出来るかもわからないし、住む所もないから。」
「だったら私を手伝ってくれないか、宿舎もある。」
「でも、何をするのかも聞かないと答えられないよ。」
「そんな事言わずに手伝っておくれよ。」
「う~ん、解りました。そうします。じいさんがここにいると言う事はわるいことじゃなさそうだし。」
「よし、じゃあこの人から特別パスをもらって咲都の所へ行ってくれ。」
善火は嬉しそうに笑っていた。
「特別パスって、ぼくは特別なの?」
審査官が善火の代わりに答える。
「ジャパンシティは血縁がないと入国できないんだ、だから特別パスを発行するんだよ。」
「ありがとう、じいさん。」
「うむ、うむ。」
よくは解らないが、じいさんのおかげで入国できるみたいだ。
亜偉はパスをもらいCルームにいった。そこには咲都と一人の女性がいて話をしていた。
「亜偉、どうだった。この人が善火の所に案内してくれるの。」
「そのじいさんだったら今そこで会ったよ、じいさんが入国させてくれたよ。」
「えっ、善火はなぜ私には会わないで、亜偉にだけ会ったの?」
「知らないよ。」
するとそこにいた女性が
「亜偉さんに会ったのは特別入国のための証明のためだから、審査官以外の人にはここでは会ってはいけないの。」
「そうだったの。」
「じゃあ、善火の所へ行きましょう。」
Cルームを出るとそこはもう屋外で、大きなゲートに向かって歩いていく。
「あのゲートでパスを見せて外に出ればもうジャパンシティよ。」
ジャパンシティの空気は以外にもクリーンな状態で慣れるのに時間がかかりそうだった。ゲートのセンサーにパスをかかげると、エアーモニターに、
『Welcome to Japan City:ジャパンシティへようこそ』
の文字が点滅した。
2352年、地球上は霧に包まれていた。化石燃料がもともと少なかった日本はその形態を残していた。霧に包まれている事には変わりはなかったが、人間が生きていくための物は他の土地よりは恵まれていた。ここにはかすかだが電気もあった。 東京湾に入ってくる船の1艘に亜偉達は乗っていた。咲都の親戚が日本にいると聞いて、それをたよって東京湾にたどり着いたのだ。ここは現在もっとも入りにくい港の1つであり、ジャパンシティの人間とのDNAチェックの合格証がなければ決して入る事は出来ない。 桟橋に付いた船にはセキュリティチェックの一団が入ってくる。咲都は善火から受け取った親族証明カードを見せている。亜偉は呼ばれるまで何もすることがない。仕方がないので外を見ていると既に入国拒否された人々が隣の船に乗り込んでいた。 この国に入れるのはこの船の中でもひとにぎりの人間だけだ。亜偉達はここで入国できなかったらもう行くところはない。咲都の渡したカードをセキュリティチェックボックスに入れると、善火のメッセージが流れた。 そこには咲都と亜偉をジャパンシティに入国させ、品川に行かせるように指示されていた。 セキュリティチェックは住所の照合を行っているようだ。しばらく待っていると、
「スタンバイAに進みなさい、そこで呼ばれるまでしばらく待機しなさい」
咲都と亜偉は通路を進んでいった。周りの人たちはじろじろと二人をにらんでいた。なにしろ入国できるのは全体の3パーセント程度でしかない。その中の二人が先に進んでいくのだから。 「Stand by A」と書かれた扉の前に立つとイメージドアは10パーセントくらいまで透過した。中には二人の人がいた。その先が税関らしい。二人が入っていくと中にいた二人は次のゲートに進んでいった。咲都が亜偉に
「やっぱり、チェックがきびしいね。」
と言うと、亜偉は言った。
「君は大丈夫だよ。ぼくはどうだかわかんないけど。」
亜偉は善火とは血のつながりはない。善火が咲都と一緒に入国できるように指示を出しているだけなのだ。入国審査で引っ掛かる可能性は大きい。でも、あまり深刻には考えないようにしている。 亜偉にとってはこの国にどうしても入国したいわけではないのだから。どうせここも深刻なエネルギー問題を抱えて近い将来、崩壊してしまうに決まっている。みんな、少しでも長生きがしたいだけなのだ。
「ここは空気がきれいすぎる、あまりクリーンだと息苦しくなるな。」
「そうね、外の空気になれているからこれだと息苦しいね。」
この入国管理タワーは完全にエアーコントロールされていて50年前と同じ状態が保たれている。亜偉達は劣悪な外気に慣れているのでかえって息苦しく感じるのだ。さっき入ってきた扉から人が入ってきた。 すると、「Stand by B」と書かれた扉に「咲都・亜偉」の文字がディスプレイされ、10パーセントまで透過した。ドアを抜けると審査官の姿があった。
「咲都さんですね。入国審査はパスしました。Cルームで待っていて下さい。」
「亜偉は一緒に行ってもいいんですね。」
「亜偉さんは直接入国扱いではないのでこれから審査があります。」
「そうなんですか。」
「亜偉さん、こちらで審査を行います。」
「はい、わかりました。審査ですね。」
やはり簡単には審査を通してくれそうもない。審査室に入るとそこに一人の老人が座っていた。その老人はゆっくりと立ち上がって、
「私が善火じゃ、よく来てくれたな。」
と言った。
「あなたが善火さんですか。ぼくは入国できるんですか?」
「もちろんじゃ、入国してからやることは決めてるのか?」
「いや、それは、ここで何が出来るかもわからないし、住む所もないから。」
「だったら私を手伝ってくれないか、宿舎もある。」
「でも、何をするのかも聞かないと答えられないよ。」
「そんな事言わずに手伝っておくれよ。」
「う~ん、解りました。そうします。じいさんがここにいると言う事はわるいことじゃなさそうだし。」
「よし、じゃあこの人から特別パスをもらって咲都の所へ行ってくれ。」
善火は嬉しそうに笑っていた。
「特別パスって、ぼくは特別なの?」
審査官が善火の代わりに答える。
「ジャパンシティは血縁がないと入国できないんだ、だから特別パスを発行するんだよ。」
「ありがとう、じいさん。」
「うむ、うむ。」
よくは解らないが、じいさんのおかげで入国できるみたいだ。
亜偉はパスをもらいCルームにいった。そこには咲都と一人の女性がいて話をしていた。
「亜偉、どうだった。この人が善火の所に案内してくれるの。」
「そのじいさんだったら今そこで会ったよ、じいさんが入国させてくれたよ。」
「えっ、善火はなぜ私には会わないで、亜偉にだけ会ったの?」
「知らないよ。」
するとそこにいた女性が
「亜偉さんに会ったのは特別入国のための証明のためだから、審査官以外の人にはここでは会ってはいけないの。」
「そうだったの。」
「じゃあ、善火の所へ行きましょう。」
Cルームを出るとそこはもう屋外で、大きなゲートに向かって歩いていく。
「あのゲートでパスを見せて外に出ればもうジャパンシティよ。」
ジャパンシティの空気は以外にもクリーンな状態で慣れるのに時間がかかりそうだった。ゲートのセンサーにパスをかかげると、エアーモニターに、
『Welcome to Japan City:ジャパンシティへようこそ』
の文字が点滅した。